TSUMUZIさんとの出会いは、かれこれ10年くらいになると思います。
1枚目のアルバムでレコーディングをしまして、ジャズバイオリニスト、そして変拍子を得意とし、独特の世界観がとても素敵な方で、
その1枚目のアルバム以降、昨年久しぶりに連絡が来まして、
「ライブPAをしてほしい」と言うオファーをいただきました。
私はレコーディングエンジニアなので、PAはほぼできないのですが、
昔からの知り合いで、編成も少なく、私にできることであれば、私はすることにしています。
TSUMUZIさんは仲良くさせてもらっているので、私はお受けすることにしました。
今回は昨日(2017年2月26日)行われた模様をお話しします。
表参道にあるセゾンアートギャラリーという、セゾン現代美術館が設立したギャラリーで、
地下一階がカフェスペース、そして地下二階いつもは絵の展示を行っているのですが、そこでライブをしました。
TSUMUZIさんの代表曲「二・二六事件」をテーマに毎年定期公演となっており、演奏と、踊り、そして語りや芸術で繰り広げられます。
昨年は書家の竹内翠凰さんがTSUMUZIさんの代表曲「二月二十六日のタンゴ」の演奏に乗せて書を書いたり、小説家の永井紗耶子さんの語り、バイラオール、パルメロとして活躍されている伊集院史朗のパルマなど、とても素晴らしいライブでした。
今年は、その竹内さんが書いた書を壁に飾った前で、粕谷尚弘さんが「二月二十六日のタンゴ」の演奏に乗せて「いけ花」を2つ完成させました。
生花を「見る」ことはありますが、その「過程を見る」ことはとても貴重な経験で、大きな作品を完成させるのに、重い木を立てたり、花を添えたり、繊細で、かつダイナミックで、力強い印象を受け、とても感激しました。最終的な全体像を捉えて、魅せるために考えつくされているのだなと、これはPAと同じで感覚や過去の体験が今の作品になるのかなと思いました。とても素晴らしかったです。
そこに活動弁士、坂本頼光さんの流暢な語りで和を感じ、美醜さんの美しい仕草の観音舞が、演奏と生花によって作られた世界で綺麗に動き始めます。
華麗に、切なく、日本の美と、伊集院さんのパルマに、TSUMUZIさんの曲の面々。
一瞬海外のものと日本のもので、相対する感覚になりますが、これがライブになると一気に溶け込んで、セゾンアートギャラリーが大きなキャンバスになり、
色が塗られていき、完成します。
そこにお客さんが絵の中に入り込んだような印象になれる。不思議な感覚です。
最近のライブでは、演奏した音楽にインスパイアされて絵をかいたりする素晴らしいコラボレーションが多かったりしますが、
出来上がったものが自分の思い描いたものと印象が違うなと感じる部分もあったりすることがあります。
TSUMUZIさんのは一つのノンフィクションのテーマにそって繰り広げられるので、皆さんがその一つに向かって作り上げる。
ドラマのようにかっちり台本があるものでもなく、その場のアドリブも楽しめる。
そこが皆さんもライブを観て楽しめるところだなと感じました。
音楽は芸術だと、改めて思わせてくれる、総合演出のTSUMUZIさんの世界がとても素晴らしかったです。
全てが一つになった3時間の「芸術作品」でした。
そんなTSUMUZIさんの新譜、「俺のリベルタンゴ ~ 情熱の五大陸」が発売中です。
CDを買っていただいて、聴いていただいて、でも機会があったら是非観に行って欲しいと思います。